小児眼科
小児眼科
小児眼科では主に乳児から小児までの眼科診療を幅広く行います。
一般的に幼児期は視機能の獲得に大変重要な時期と言われています。視覚の感受性は生後間もない頃から1歳半位までが最も高く、そこをピークに徐々に下がっていきます。
子供によくみられる斜視や弱視は子供であることで見落とされやすく、放置されていると後に「弱視」といった視機能に障害をきたした状態になってしまうことがあるため、早期発見と早期治療が大変重要になります。
両眼の視力が悪ければ「TVを近くで見る」「目を細めて見る」などの行動で早めに気が付かれるケースもありますが、片眼だけ悪い場合は、傍から見ただけではわかりづらく、本人はもちろん保護者の方も気が付くことが難しいため、就学時健診で初めて見つかるというケースも少なくありません。上記にあるように視覚の感受性は徐々に下がっていくため、発見が遅れるとそこから治療をしても十分な視機能が得られない場合がありますので、お子様の目に下記のような症状がある際は一度検査を受けられることをお勧めします。
などの症状がみられる場合は一度ご受診ください。
斜視とは両眼の視線が正しく目標に合いたしていない状態、すなわち”眼位ずれ”であります。これにより脳内で両眼の映す像の不一致が起こり、複視(物が二重に見える)が出現したり、立体感や奥行き感が低下していきます。なお斜視は両眼視機能の発達を阻害するだけでなく、弱視が伴うこともあります。原因について小児の場合は先天性で原因不明なことが多いと言われています。その他屈折調節異常(主に遠視)、眼球を動かす筋肉や神経の病気、視力不良になるような眼疾患、ウィルス感染、脳腫瘍などによって引き起こされます。
斜視は眼位ずれの方向により、水平斜視(内・外斜視)、上下斜視、回旋斜視(内・外回旋)に分類されますが、単独ではなく合併していることが多くみられます。
内斜視は片眼が内側に向いている状態で、生後6ヶ月までに発症した乳児内斜視(先天内斜視)、生後6ヶ月以降に発症した後天性内斜視に分類され、調節が関与して発症する調節性内斜視、眼位が良い日と悪い日がほぼ48時間周期で繰り返す周期性内斜視、突然発症する急性内斜視などがあります。対して外斜視は片眼が外側に向いている状態をいいます。新生児の70%~75%の眼位は外斜位または外斜視でありますが、生後2~3ヶ月頃から良化し始め、生後6ヶ月にはほぼ正位になります。しかし眼科的神経学的異常がないにも関わらず1歳までに眼位が正位化せず外斜視のままである乳児外斜視になることもあります。乳児外斜視は発症時期が早いため両眼視の発達が強く障害され、恒常性外斜視(常に外斜視の状態である場合)を示すものが多くみられます。しかし小児期の外斜視の内最も多くみられるのは間欠性外斜視(時々外斜視の状態になる場合)であり、両眼視機能の発達が良好なことが多いものです。
斜視の診断は目の動きを見ることでわかります。眼球運動検査(両方の目を動かす筋肉の動きなどを確認する)、眼位検査(目線がずれている場合、その角度を計測する)、両眼視機能検査(両眼で立体として物を見る力を調べる)など行うほか、斜視の原因(他の病気の有無)を調べます。
斜視は様々な原因や病態によって生じる多因子疾患でありますが、乳幼児に起こる斜視の治療目標はいずれも正常両眼視機能の獲得です。年長児では両眼視機能の発達、保持、回復や頭位異常の解消が目標となります。就学前になると斜視が及ぼす心理社会的影響が増すため整容目的に、学童期以降は眼精疲労や複視などの自覚症状の解消を目的に治療を行うケースが増えます。
基本的な治療方法は、屈折矯正(どのような斜視でも屈折異常があれば矯正レンズを常時装用することが基本になります。)、弱視訓練、プリズム療法(光学的に光線の方向を変え、網膜の中心領域で両眼視を刺激する治療法)、視能訓練、また、年齢や程度により手術療法も選択肢となります。手術は主に入院し、全身麻酔下で目に付着している筋肉の位置を調整することで目の位置を整えていきます。
弱視は視覚情報が伝わる経路(角膜、水晶体、硝子体、網膜、視神経、脳)のどこかに支障があることにより、視力発達の感受性期に片眼または両眼に適切な視覚刺激を受けることができなかったために視力の発達が止まったり遅れたりする状態です。弱視の原因には以下のようなことが考えられます。
斜視によって引き起こされた弱視
両眼の屈折度数差が大きくなっていることで、屈折異常が大きくなっている側の目の方に視力障害が起きている状態
先天性白内障や黒目の中心の部分が濁るなど、目の病気が原因で光が十分に網膜に到達しないことで起こる弱視
両眼の大きな屈折異常(主に強い遠視や乱視)が原因とされる弱視
3歳児健診で行われる視力検査によって多くは発見されますので、必ず同健診をご受診ください。弱視を診断する検査については、通常の視力検査のほか、屈折検査(網膜上に焦点が合っているかなどを調べる)、眼位検査、両眼視機能検査、眼球運動検査などの精密検査を通じて総合的に判断します。
弱視の原因によって治療方法は異なります。斜視が原因であれば斜視の治療を行います。白内障や眼瞼下垂など目の病気による形態覚遮断弱視であれば、それらの病気の治療が優先されます。また屈折異常弱視の場合は眼鏡による矯正で物をはっきりと見えるようにさせて視力向上を促します。不同視弱視であれば、適切な眼鏡を装用した上で、視力が良い方の目にアイパッチをして、視力が悪い方の目で見る力を訓練していきます(弱視の程度により1日2~6時間)。
H18年4月1日より、小児弱視、斜視および先天白内障術後の屈折矯正の治療用として用いる眼鏡およびコンタクトレンズ(以下「治療用眼鏡等」という)の作成費用が、健康保険の適用となり、患者様負担割合以外の額が療養費として償還払い扱いで、患者様に給付されることになりました。
対象年齢は9歳未満で、上記の「治療用眼鏡等」が給付対象です。
一般的な近視などに用いる眼鏡やアイパッチ、フレンネル膜プリズムは対象外です。
患者様が全額自己負担で「治療用眼鏡等」を購入した後に下記の書類をご加入になっている健康保険の組合窓口等に提出し、療養費支給申請することによって、患者様負担割合以外の額が国で定められた交付基準の範囲内で保険給付されています。
支給額上限は眼鏡で38902円(支給額上限内で眼鏡店に支払った金額の7割が支給されます)
再給付については、5歳未満では前回の給付から1年以上後であること、5歳以上では前回の給付から2年以上後になっています。
8歳頃までの子供の目を正しい成長に導いてあげられるかどうかで、目の一生は決まってしまうと言われています。しっかり栄養をとること、目の機能を正しく、しかも充分に使うこと大切です。
これを繰り返し学習して視機能をを発達させることができます。
屈折異常には「遠視」「近視」「乱視」の3種類があり、これは目の奥行きや角膜のカーブのバランスで決まります。
両眼視機能を回復させるために眼鏡処方やプリズムという特殊なレンズを処方そる場合があります。
「弱視」の治療方法は、アイパッチ(視力が出る方の目を遮蔽して、弱視の方の目を強制的に使わせることで視力の成長を促すこと)があります。
遠くも近くも見えにくい状態のことです。目の奥行きが短いことにより、網膜の後ろで焦点を結んでいます。
強度の遠視では、視力的に問題なさそうに見えても、近くを見る時に必要以上に調節力を要するので、遠近のピントの切り替えが上手にできなかったり、目が疲れやすくなることがあります。そのため、集中力の低下など、子供の心の発達にも影響を及ぼすこともあります。
遠視は凸レンズによって矯正します。
近くの物は見えますが、遠くの物ははっきり見えない状態のことです。
生まれつきの素因や、体の成長とともに目の奥行きが伸びたり、長時間の近業作業が目の負担となり奥行きがのびるなど様々な原因よって、網膜より手前で焦点を結んでしまいます。角膜や水晶体のカーブの変化も原因になります。
近視は凹レンズによって矯正します。
近年の環境要因の変化には、デジタル機器の普及による近業作業時間の増加、屋外活動の減少、睡眠時間の減少などが考えられます。
環境要因による近視の進行に関しては、屋外の活動(1日2時間程度)や目を休めること、質の良い睡眠をとることが近視の進行抑制には重要です。
角膜が球ではなくラグビーボールのような形になっていたり、凹凸があることで起こります。
乱視は円柱レンズによって矯正します。